蟷螂子 「Lost Vision/プリンセスは、誰がつくったのか。」
9s Galleryでは、2026/11/13(金)から 2026/11/22(日)まで、蟷螂子個展「Lost Vision/プリンセスは、誰がつくったのか。」を開催いたします。本展は、今年2月に展開されたシリーズ初個展「Lost Vision」をさらに発展させ、「私たちは何を見ているのか」という問いから、「私たちはどのようにイメージを記憶し、意味を与えているのか」という視点へと展開するものです。前回の個展では、歴史的な出来事や映像文化をモチーフとしながら、画面を意図的に不鮮明に描くことで、作品自体のみでなく、鑑賞者自身の記憶や経験によってイメージが補完されていく構造を提示しました。あるプリンセスは、世界で最も知られた人物になりましたが、その人物自身を知る者はほとんどいません。私たちが記憶しているのは、写真や映像、ニュースなどのイメージを通して幾度となく複製、共有されてきた彼女のイメージです。今回の展示では、王室、スポーツ、音楽、映画など、時代やジャンルの異なるモチーフを扱います。これら全てに共通しているのは、実際の出来事や人物以上に、「繰り返し複製され、社会の中で共有されてきたイメージ」として経験、記憶されている点です。
また今回、絵画へ新たに「タブロイド」を意識した構造を取り込んでいます。今回の展示作品においては側面に断片的なテキストが配置されており、正面からの鑑賞だけで作品を理解することはできません。鑑賞者自ら身体を動かし、作品の周囲へ回り込むことで初めてその存在に気付く設計となっています。この体験は、《Lost Vision》が一貫して扱ってきた「見る」という行為を、受動的な鑑賞から能動的な行為へと転換する試み、また、視覚、「見る」ことの暴力性を暴く仕掛けでもあります。前回の個展が「イメージは曖昧になる」という現象を提示した展示だったとすれば、今回の個展はその曖昧さがどのように生まれるのか、その背景にある視線や反復、記憶の構造まで踏み込む展示となります。私たちが「見ている」と信じている世界は、どのように形づくられているのか。長期的なプロジェクトとして進化を続ける新たな《Lost Vision》の空間を、ぜひ会場で体験していただければ幸いです。
