
阿曽藍人「Earthscape」
土を焼く行為から風景を可視化する阿曽藍人の新作展。音とともに土の変容の時間を感じる10日間。
Nonaka-Hill Kyotoでは、阿曽藍人による新作展「Earthscape」を9月12日より10月24日まで開催いたします。阿曽藍人は1983年奈良県生まれ。現在、岐阜県美濃加茂市を拠点に制作しています。「Earthscape」は、土を焼くという行為を通して、その内に潜む風景を可視化しようとする試みです。
本展では、《痕跡の影 / Threshold Trace》、《Earthscape》、《Sphere of the Earth》、《Intimate Space》の4つの作品とともに、通常は完成した作品の背後に隠れている「制作の音」を空間に漂わせ、土が変容していく時間そのものを感じる場をつくり出しています。
この、風景を音として捉える試みは、多面体の無指向性スピーカーを用いて「聴く場」をつくることをコンセプトに活動するListudeとのコラボレーションによるものです。Listudeは2007年より奈良で、音と食を組み合わせた「家宴 -IEUTAGE-」を始め、音を軸に人や空間を結ぶ活動を続けてきました。現在は山梨県北杜市の森を拠点に、新たなプロジェクトに取り組んでいます。
阿曽は当初、電気窯を用いて制作していましたが、焼き物をつくることへの違和感を抱いていた時期に野焼きと出会います。煙、匂い、音、炎、温度──土が火によって刻々と変化していく過程に身体ごと立ち会うことで、土を焼くという行為を初めて実感として捉えるようになりました。以来、制作のプロセスに自らの身体で関わる方法を選択しています。
それは原初的な方法への回帰ではなく、火、土、重力といった制御しきれない要素との関係を探りながら、独自の造形言語へと洗練していく実践です。展示空間の1階から2階の壁面にかけて配置された《Earthscape》は、土を焼くという行為そのものを造形として捉えたシリーズです。泥を約1mmの厚さに伸ばして薄い陶板とし、それらを連ねることで一つの平面を立ち上げています。
そこには陶という素材がもつ硬さと脆さ、重厚さと軽やかさが同居し、火を通過した時間が刻まれています。形を持たなかった泥は輪郭を獲得し、その断片が連なることで、一つの「土の風景」として立ち現れます。1階のフロアには、土の球体《Sphere of the Earth》が置かれています。土は高温で焼かれると、熱によって徐々に発光します。
その現象に幾度となく立ち会うなかで、阿曽は土という素材の背後に「光のかたまり」というイメージを抱くようになりました。本作は、そのイメージを宿す依代として形づくられたものです。球体の表面はスクリーンのように、焼成の過程で生じたさまざまな現象を映し出します。
ガラスの部屋には、《Intimate Space》シリーズが陳列されています。閉ざされた箱は、その内部に触れることのできない空間の存在を想像させます。視線の届かないその場所は、鑑賞者それぞれの記憶や感覚に委ねられ、意識を外側から内側へと静かに導きます。本展を通して、阿曽が土と火のあいだに見出す「Earthscape」をご覧ください。
