
タヴァレス・ストラチャン 「Blue Keys」
妙心寺・雑華院で開催されるタヴァレス・ストラチャン新作絵画展。藍から漆黒への青とバラフォンの音が禅の静寂の中で不在と存在を問う。
タヴァレス・ストラチャンは1979年、バハマ・ナッソー生まれ。ロードアイランド・スクール・オブ・デザインでガラスを、イェール大学大学院で彫刻を学び、ニューヨークとナッソーを拠点に活動しています。多様なメディアを横断し、宇宙開発や深海探査、科学史を手がかりに、支配的な歴史から見過ごされてきた人々や思想に光を当ててきました。
代表作に、2010年代初頭に始まり、現在約17,000項目に及ぶ、更新を続けるアーカイブ《The Encyclopedia of Invisibility》があります。2013年にはヴェネツィア・ビエンナーレのバハマ館代表を務め、2019年には同ビエンナーレ本展にも参加しました。
近年はヘイワード・ギャラリーでの「There Is Light Somewhere」(2024年)、ロサンゼルス・カウンティ美術館での「The Day Tomorrow Began」(2025年)と大規模な個展が続き、2022年にはマッカーサー・フェローに選ばれています。
妙心寺の塔頭・雑華院で発表される新作絵画群は、祖母のワードサーチ遊びから着想を得たものです。藍から漆黒へと移ろう青の中に、無数の文字が埋め込まれています。読み解かれることを拒むかのような画面は、答えを出すことよりも見つめ続けることを促し、禅の公案にも通じます。演奏者なしで鳴る西アフリカの木琴バラフォンの音が、寺院の静寂の中で、不在と存在をめぐる問いを立ち上げるでしょう。
庭からの日の光、吹き込む風は、展示空間を俗世から切り離すかのようです。それは、島という周縁から世界を見つめてきた彼の創作の根源にある問い、「誰が記録され、誰が忘れられるのか」とも重なります。
